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草加市Y邸:竣工。

2014.11.29 草加:晴れ。

みなさん、こんにちは。
デザインスペックの小林です。

約5ヶ月の工期を終えて、無事に完成し、本日無事に引き渡しを終えました。
造作工事がほとんどなかったため、通常の工期よりも1ヶ月ぐらい早いですね。

前回のブログ(10月分の工事)以後は、主に内装工事と設備工事が進みました。
その途中過程と竣工した状態とで、ほとんど差がないので、今回は内装工事部分のレポートは省略して、一気に竣工した草加の家の様子をお伝えします。

まずは、こんな写真から。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 空撮全景。
今回はプロの建築写真家である田岡信樹氏に写真撮影を依頼しました。(以下、掲載写真はすべて田岡信樹氏によるものです。無断転載は禁止します)
田岡さんのご厚意でサービスで撮って頂いた写真がこれです。
当たり前ですが、自分でもこの角度から完成した建物は見たことがないので、なかなか新鮮でしたw

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 外観。
続いて、北西側の外観です。
写真正面左側のレッドシダーの板戸部分が1階作業場への入り口です。
2階の住居部分へは、右側の塔状になっている部分に玄関があり、そこから入ります。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 外観。
北側正面の様子。9mx9mx9mの立方体のプロポーションなので、ボリュームは大きいですが、ちょっとかわいらしい感じもします。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 外観。
西側正面の様子。ここが住居分の玄関。内部は階段室になっています。

では、最初に1階の作業場部分から見ていきます。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 作業場内観。
幅5.4m、高さ3.4mの入り口扉を開けると、なかには、9m四方の巨大な作業場空間が広がります。天井高さは3.8m。
このボリュームは、主に作業場に入れる機械や材料からお施主さんと相談して決まりました。
構造は純粋な在来工法で、特殊なことはなにもしていませんが、耐力壁を効率的に入れることで、このような大空間をつくることができます。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 作業場内観。
振り返って作業場の西側には事務スペースがあります。この部分はちょうど住居スペースに続く先ほどの塔状のボリュームの一部を利用しています。
ちなみに仕上げは、床こそ作業場の耐性を考慮して土間コンクリートの上に防塵塗装を施していますが、壁はラワンベニヤを貼っただけ、天井も2階の床下地となる構造用合板や梁が剥き出しの素地状態です。
これからここに機械が入り、材料が入り、お施主さんが自ら作業場として作り上げていくために、最小限の手入れに留めています。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 作業場内観。
次に、入り口扉を見てみます。スチールのフレームにレッドシダーの面材を貼り付けたシンプルなものを、ハンガーレールで吊っています。
写真は開けた状態。機械の搬入のための必要開口寸法の確保しています。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 作業場内観。
扉を閉めるとこんな感じ。
実は扉の軽量化のため、内側は面材を貼らなかったのですが、その結果、ラワン壁の素地との対比で、グリッド状のスチールフレームと面材の縦目地が、ほどよいアクセントになりました。
設計も施工もデザインしようとして現れた立面ではなかったのですが、さながら民芸で言うところの「用の美」が体現されたみたいで、みな一様に満足していました。

続いて、住居スペースに行ってみましょう。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 住居内観。
西側外観にあった玄関引き戸を開けて中に入ったところです。
このような感じで、螺旋状の階段になっています。左側が玄関土間で、写真手前の階段を上っていった右側が玄関ホールになります。
通常の上がり框による玄関とはちょっと違うのですが、土間とホールをこのように分離させることで、それぞれのスペースを立体的に広く確保することができます。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 住居内観。
2階住居スペースに上がってきました。
写真は階段室側を見たところです。
写真を見ると、まだ上にも階段が続いていますが、それについては後ほど。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 住居内観。
階段側を見たまま後ろにずずずっと下がって、2階の全景です。
天井高さ4mで、部分的に壁が立っており天井を支えています。その中間に剥き出しの構造梁があるだけで、あとは何もありません。
ここがリビング、ダイニング、寝室、子供部屋になります。
思いっきり、「作りかけ」な感じですが、これで完成です。

詳しく説明する前に、まずは、いろんな角度からこの空間を見てみましょう。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 住居内観。
階段側から見たところ。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 住居内観。
北側から見たところ。正面にあるのがキッチンおよび水回りスペースです。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 住居内観。
独立した壁の間から見たところ。
写真のように、中間の梁があるところに部分的に床がありますが、こちらも下地が剥き出しの状態です。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 住居内観。
上の写真の反対側から見たところ。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 住居内観。
ちょっと立ち位置をずらすと、このように雰囲気がまた違って見えます。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 住居内感。
南東の角からの全景。

こんな感じです。
写真からもわかるように、どこも部屋として区切られてはいませんので、このままでは、どこでどうやって生活していいかわからないかもしれません。
ですが、よく見てみると、いろいろな「きっかけ」があります。
たとえば、中間の梁には溝が掘ってあり、その直下の床には敷居があります。
ここには、建具が入れられます。
また、写真ではわかりづらいですが、中間の梁の上部には床板を乗せられるような欠き込みがあります。
途中で、部分的に床が貼ってある梁がありましたね。あんな感じで、他の部分にも床が作れます。
そして、独立壁ごとにスイッチがあり、照明器具を取り付けられるソケットが設置されています。

これらのきっかけを元に、これから住み手が自らスペースを作っていくのです。
つまり、最初から「作りかけ」を目指して計画されているのです。

そもそも、どうしてこのようなプランになったかを少しだけ話します。
お施主さんと出会って、どんな建物にしていくか色々と話をしていきましたが、外観や作業場(ご主人は家具職人)に対するイメージはあるものの、内部の居住空間については、お施主さん自身も明確な希望というものがありませんでした。
お子さんは3人、奥様もキッチンや水回りに対する多少の要望はあったものの、居室スペースに対して、設計のきっかけとなるような要望はありませんでした。

正直、最初は困りました。さて、どうしよう?と。
だって、おまかせされたからと言って、こちらがやりたい空間を説得的にプレゼンして提供するのはナンセンスでしょう?
作業場と住居スペースもしっかり区切って欲しいというし、それぞれがなんとなく繋がるとかいう条件もない。

そこで、思い切ってその要望がないという部分を設計のきっかけにすることにしたのです。
唯一の手がかりは作業場。
ですが、それが最大のポイントになりました。

というわけで、この建物のコンセプトは「カスタム」にしました。
1階の作業場でご主人自ら必要なものをつくって、2階の住居スペースを仕上げていく。
そのために、最初から「作りかけ」をつくったのです。

と、説明はこれくらいにして、残りの部分も見ていきます。
居室部分が作りかけな反面、水回りは最初に必要な部分なので、こちらはちゃんと「作り終わって」いますw

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 住居内観。
再び階段室部分です。写真左手にある扉部分がトイレになります。
ちなみに、トイレの建具もご主人がつくりました。
こちらはさすがに完成時にはないと困るので、工事期間中に製作してもらいましたけどw

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 トイレ。
トイレ内観です。正面奥には、あとでご主人が収納家具を取り付けられるように、段を設けています。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 住居内観。
トイレと同じ並びには、キッチンをまたいで洗面室があります。
ここの建具もご主人作。ドアノブもご自身で選んできました。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 洗面室。
洗面室内観です。化粧台もご主人がつくったものです。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 キッチン。
こちらはキッチンスペース。キッチンもご主人お手製、、、と言いたいところですが、こちらは家族会議の結果MUJIのキッチンになりましたw
ちなみに、先ほどの化粧台は、こちらの面材に合わせてオークでつくられています。

これで2階部分は以上です。
続いて、先ほど階段が伸びていた、「この上の空間」を見てみましょう。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 3階内観とバルコニー。
キャプションで3階とうたっていますが、ここは厳密には「階」ではありません。法規上は塔屋と言って、ルーフバルコニーに出るための階段室にすぎません。
それ以外は吹き抜け空間です。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 3階内観。
こんな感じで、2階部分を見下ろせますが床はありません。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 バルコニー。
こちらがバルコニーになります。吹き抜けレベルにバルコニーがあるため、日当たりは抜群です。また、隣家の屋根レベルにあるため、視線も気になりません。
さらに、パーゴラ状に梁がかかっており、ここに洗濯物を干すための金物を取り付けたり、また、オーニングを取り付けたりすることで、2階居室への採光をコントロールすることができます。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 3階内観。
バルコニーを進んで、吹き抜け部分を反対側から見てみます。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 3階内観。
梁の上を慎重に歩いて、別アングルから撮影。

2014.11.21 ymn竣工。
2014.11.21 3階内観。
さらに別アングルから、もう一枚。

この吹き抜け部分は、この住居スペースにとって、最大の余剰空間です。
梁間に板を貼れば、ロフト状の床となりますが、高窓からの採光はなくなります。ですが、個室的なスペースはつくれます。
部分的に板を貼れば、採光とロフトとを両立することもできます。
グレーチングのような床を貼れば、さらに最大限利用できるかもしれません。

その判断も、ここの住まい手に委ねました。

設計者としては、結構な冒険だとは思いましたが、家というひとつの家族が住む空間にとっては、極めて自然なことのようにも思えます。
なぜなら、この家はこの家族のために建てられてはいるものの、まだここでその家族は生活をしていないのですから。
ここでの生活は、空間だけでなく住まい手にとってもここがスタートなのです。つまり0なのです。
だから、何がよくて何が悪いかの「ものさし」はここからできあがっていくのです。

引き渡しの説明をしている最中も、ご主人はすでに、色々思案を巡らせていました。「ここに手すりをつけたらどうか?ここまで板を貼ったらどうか?手すりの代わりに収納で腰壁をつくってみようか?」などなど。

そして、引き渡しを終えて、建物を見上げながら、ご主人が一言。
「いやあ、最高ですね」

この草加の家の住まい手になるYさん家族が、どのような「ものさし」で家をつくっていくかが、とても楽しみです。