月別アーカイブ: 2013年1月

葛飾区T邸:捨てる技術。

2013.01.28 東京:晴れ。

みなさん、こんにちは。
一級建築士事務所デザインスペックの小林です。

本日は、前回の施主打合せ内容を踏まえて、スタッフの小川さんと打合せでした。

0128TSN01
いつものように、「とんでん」にて打合せ。

さて。
今回のタイトルは「捨てる技術」
ちょっと前から、「断舎利」なる言葉をよく耳にしますが、ちなみに、それとはまったく関係ないです。

前回の打合せにて、お施主さんから色々な意見を引き出すことができました。
そして、スタッフの小川さんには、それをもとにプランを再検討するよう指示をしていたので、今日はその打合せです。

小川さんも毎回施主打合せに参加しているので、お施主さんの言葉を丁寧に汲み取って、検討プランを練ってきました。
ですが、なかなかプランを詰めることができずにいます。

それはなぜか?

答えは、「元のプランに囚われてしまっている」部分にあります。

自分も設計を始めた頃は、最初に「これだ!」というアイデアが浮かぶと、どうしてもそれが整合するように意識が働き、
プランをまとめよう、まとめよう、と考えがちでした。
そして、打合せの度に、細かい要望や変更要望が出ると、そのプランを修正して対応していこうと考えがちでした。

もちろん、そうやって検討を重ねていって、プランを成熟させていくというのがひとつの道ではあるのですが、
時にはそうでない時もある、ということを常に感じておける嗅覚も必要なんです。
アイデアというのは、必ずしも万能であるとは限らないのです。

このT邸は、
「スキップハウス」というコンセプトの名の通り、2階建てだけど6層分のフロアがある、スキップフロアだらけの空間というアイデアでした。
ですが、前回の打合せで出てきたお施主さんの考えを汲み取っていくと、このアイデアでは、いずれどこかで躓くだろうと思いました。

そうなると、自分の場合は、このアイデアはあっさりとやめて、また違うアイデアを探す脳内トリップに浸ります。

そう。
今回捨てるのは、アイデアです。

もちろん、全部をぽいっと捨ててしまうのではありません。
考えて出てきたものは、その時々での貴重な財産です。
それは、常に脳内にストックしておきます。

その上で、頭の中をフラットにして、新たなアイデアと戯れるわけです。

小川さん自身、時間を掛けて練り上げていったプランを捨てることに、戸惑いを感じていましたが、これは大事なステップだということを教えました。
というのも、ここでプランを捨てたとしても、それは振り出しに戻るわけではなく、
「ここまでプランを練ってきて、それを捨てた状態」
からのスタートですから、その経験値をもとに新しいアイデアを湧かせることができるのです。

そんなわけで、いつもなら頭の中で描いている映像を、小川さんと共有するために、トレペにぐりぐり描き出します。

そして、ひとつのアイデアがまた生まれました。

コンセプトは、まだうまく表現できませんが、
「踊り場ハウス」
という感じでしょうか。

次の打合せは2月2日。
さて、このアイデアを、形にしていきますよ。

石巻市W邸:基礎工事。

2013.01.26 石巻:雪。

みなさん、こんにちは。
一級建築士事務所デザインスペックの小林です。

先週着工した、W邸。
今回は基礎工事の様子をお伝えします。

2013.01.23 WTN土工事確認。
1月23日:基礎の下地をつくる土工事の様子。
今回は「べた基礎」と言って、建物の下部全部をコンクリートで覆う基礎になっています。
そして、その四辺および、内部には「地中梁」と言って、このべた基礎の強度を確保するための梁があります。
この段階では、基礎形状の通りに根切り(土を基礎形状に合わせて掘ること)が為されているかを監理します。

2013.01.24 WTN型枠確認。
1月24日:基礎型枠の確認。
続いて、基礎のレベルを確認します。
べた基礎は、地盤面から12cm以上埋まっていなければなりません。これを「根入れ深さ」と言います。
盛り土や嵩上げなどした場合、この深さが本当に守られているのかな?と不安になるような現場も時々見かけますが、これをしっかり守らないと、いくら基礎が強固に作られていても、地盤に対しての固定強度が確保できず安全性に欠けます。
あくまで私見ですが、今回の大震災による津波で、古い住宅が、土台上から流されている比率が高いのに対し、新しい住宅がべた基礎ごと流されている比率が高いのは、こうした根入れ深さの不足も関係しているのではないかと思っています。

2013.01.25 WTN防湿シート、配筋作業確認。
1月25日:基礎配筋工事の確認。
レベルの確認が完了したので、配筋作業に入ります。
写真に写っている透明なビニールシートは「防湿シート」と言って、地中の湿気が床下に上がってくるのを防ぐための処置です。
ちなみに、建築基準法上は、床下の防湿処理として「コンクリートを打設」するなどの処置をした場合、それ自体が防湿の役目を果たすと謳っています。
よって、べた基礎のように、この上に全面コンクリートを打設する場合、業者によっては、それで防湿性能が確保されているとして、この防湿シートの効果を軽視する場合もありますが、自分はそうは思いません。
なので、この防湿シートがきちんと施工されているかは、しっかりと確認します。
そして、配筋工事へと進みます。

2013.01.26 WTN配筋作業確認。
1月26日:基礎配筋工事の中断。
昨年に続き、今年も雪の多い石巻。
配筋途中で積雪となり、作業を進められず、中断。
28日に打設の予定でしたが、工程を見直すことにしました。

石巻を含め、現在東北ではコンクリートの需要過多のため、供給事情がとても厳しいです。
今回も、雪という悪天候のため、コンクリート打設の予定を1週間ずらすことにしました。
その影響で、上棟も2月下旬にずれることになりましたが、ここで無理矢理工程を守ることは、品質管理に影響を及ぼすので、決して無理はしません。

現場的には、色々な段取りの調整が必要になるため、工程通り進めたいというのが本音ではありますが、基礎というのは、施工してしまったら隠れてしまう部分ですから、とにかく品質管理第一なんです。
設計監理者として、このようなことも、しっかり判断して決断していくことが、現場では求められます。

神経すり減らすので、とっても大変ですが、がんばります。

石巻市C邸:アイデア。

2013.01.22 東京:晴れ。

みなさん、こんばんは。
一級建築士事務所デザインスペックの小林です。

昨年12月にCさんと顔合わせしてから、約1ヶ月。
ひとつのアイデアを描き出しました。

それがコレ。

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今回のコンセプトは、
「出窓ハウス」

といっても、出窓が沢山ある家というわけではないですよ。

一般的には装飾窓として捉えられている出窓という要素を、ひとつの空間として考えてみようという試みです。

まだスケッチ段階ですが、自分の場合はこうして描き出す前に、脳内で沢山ドローイングしてるので、実はもう空間はだいたいできあがっています。

あとは、これにスケール感を与えていく作業。

いつものながら、このアイデアの神様が降りてきて描き出す瞬間が、楽しくてたまらないです。

というわけで、プレゼンの見通しが立ったので、お施主さんにご報告。
初回プレゼンは2月9日です。

葛飾区T邸:身体性を取り戻す。

2013.01.18 東京:晴れ。

みなさん、こんばんは。
一級建築士事務所デザインスペックの小林です。

本日は、前回のプレゼンを踏まえての要望を伺うための打合せでした。

先月、1/30スケールの模型とともにプレゼンをしてから約1ヶ月が経っております。
ちょっと長い気もしますが、自分の場合、ここの期間は、なるべく長く取ります。

というのも、お施主さん自身に、色々と考え、悩んで欲しいからなのです。

昨今の日本の住宅は、工業建材の耐久性、高性能な衛生設備や温熱環境、耐震性能などに関しては、本当にすばらしいと思います。
さすが、日本人、技術の国の賜物ですなって感じです。

それ自体は全然否定するつもりはないのですが、ただ、それらがあまりにもイデオロギー的な感じがして、空間と住み手との距離がなんだか近いようで遠い気がするんですよね。
なんだか身体性が無い。

どういう意味かというと、先に挙げた素材に関しても設備に関しても構造に関しても、基本は

「数値化」

なんです。 すなわち、性能の「見える化」。

これって、実はものすごく危険な思考停止状態を作り上げてしまうんじゃないかと、自分は思っているんです。

わかりやすい例は、日常生活でもあります。
たとえば、家電量販店の
「他店より、1円でも安く!」
みたいなのは、価格自体が、そのものの購入に対する判断基準になってしまっている。性能の善し悪しに対して、値段の高い安いを引き合いに出してくる。
もちろん、こういう消費社会ですから、安いものの方が経済的負担は小さいですが、これは、あるものを購入する場合の判断という意味では完全に思考停止状態なんです。

ほかにも、たとえば予備校とかで「55段階制」
みたいなのがありますが、これだって別に数値化する必要のないものを、親や本人にわかりやすい実感のようなものを与えるために見える形にしているに過ぎません。
本当に学んだことが身につけば、それは自分の感覚としてつかめるはずですが、それを数値に頼ってしまっている。

他にも色々ありますが、キリがないのでこの辺で止めておきます。
そして、先に述べた建築畑でも、やっぱり同じなんですね。

家造りを考えているみなさんだったら良く耳にするかと思います。
「耐震等級は最高ランクの3級取得」
「高気密高断熱住宅の最高等級4」

これらの数値を、判断の頼りにしてしまうんですね。
なぜかというと、感覚的に判断できないので、このような数値情報を頼りにするしかないから、です。

もちろん、これらの等級そのものが性能的に劣っているとか、そういうことを言いたいわけではないです。
ですが、この数値を満たすことができる空間には、その性能差にずいぶん大きな開きがあるのも事実です。

なぜなら、「数値を満たすための手法を使えば、実態が伴っていなくても、等級は取得できるから」。

で、本来なら、実態が伴っていないものに対して、感覚的におかしい!と思えるはずなんですが、その判断に身体性が伴っていないため、その判断すらできなくなってしまうのです。
「専門的な事はよくわからないけど、これは絶対におかしい!」みたいな。

うーむ。
・・・・話がずいぶんと横道に入ってしまいました(^^;

まあ、要するに、
家を考える際には、これらの数値的な判断基準もある程度大事かもしれないけど、それよりもっと根源的な「この家、楽しい!」とか、「ここ、気持ちよさそう!」とか、そういうプリミティブな感覚をもっと大事にして欲しいんですね。
だって、そこでこれから暮らすんですから。

そういう感性、つまり身体性をちゃんと感じてほしくて、プレゼンには模型を準備するんです(ああ、やっと本題に戻れたw)。

さて。
模型をお預けして1ヶ月。
予想通り、お施主さんから、色々と要望が出て参りました。

そして、嬉しいことに、その要望の大部分が、感覚的なものだったのです。
この1ヶ月で、お施主さん自身で、自分の身体性を徐々に取り戻しつつあるのが実感できました。

結果として、プランは大幅に変わることになりそうですが、自分的には、最初のプレゼン大成功!

スタッフの小川さんも、その辺りを感じ取っていたらしく、打合せが終わってお施主さんと別れるやいなや、
「これからミーティングお願いします!」
と、テンション上がっていました。

次のプレゼンも、楽しくなりそうです。

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回収してきた前回のプレゼン模型。
お施主さんもいじり倒したみたいで、若干ぼろぼろになってますが、それもまた嬉しいこと。

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次回プランは、ここからがらっと変わるかと思うので、内部もお見せしておきましょう。

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分割した模型の断面はこんな感じ。
平面だけでは見えてこない断面のつながりは、こういうった模型じゃないと体感できないです。

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内部の様子。1階のパブリックスペースからの眺め。
1/30スケールでつくると、このような写真が撮れるからいいです。

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1階からちょこっと上がったスペースからの眺め。

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2階の細長い空間。こちらは室としての機能は制限していないので、廊下になったり部屋になったり倉庫になったりクローゼットになったり、色々です。

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同じく2階の、背の低い空間。こちらも、その時々で色々な空間に変化します。

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「ちょっとだけミーティングを」という小川さんと、帰りがけに打合せ。
結局日付回ってしまいました。
情熱的に取り組んでくれる、すばらしいスタッフです。

石巻市W邸:着工。

2013.01.15 石巻:雪。

みなさん、こんばんは。
一級建築士事務所デザインスペックの小林です。

さあ、石巻W邸、いよいよ着工となりました。
しかし、東北の冬将軍から、積雪の洗礼を浴びました(^^;

この寒さに耐えて、ちゃんと現場監理しろよ、という激励と受け止めて、がんばります!

2013.01.11 WTN盛り土確認。
11日の現場確認時の写真。
石巻は全体的に地盤沈下しているので、地盤改良に先立って、盛り土をします。

2013.01.14 WTN測量01
そして14日には、建物の基準を出すための測量打合せ。
朝一での打合せでしたが、ごらんのように、地面はあっという間に真っ白に。

2013.01.14 WTN測量02
今回の建物は、北側斜線制限ギリギリいっぱいに建てます。東京では、こういったさまざまな制限のラインギリギリまで建てることは日常的なのですが、石巻では、なかなか珍しいようで、市役所の審査官も「攻めますねぇ」と驚いていました。
というわけで、建物の配置は、とってもシビアです。
業者さんに協力してもらいながら、雪に負けずに基準出しをしました。

2013.01.15 WTN地盤改良01
翌15日も、朝から雪。
今日と明日で地盤改良を行います。
積雪ですっかり埋まってしまった、基準杭を掘り出して、柱状体(地盤改良のためのコンクリート柱)の配置確認をします。

2013.01.15 WTN地盤改良02
配置の確認を終えて、いざ施工へ。
とってもわかりにくいのですが、雪の中に、ちゃんと地盤改良のための墨出しがなされています。

1月中に基礎工事はほぼ終わらせて、2月上旬に上棟の予定です。
次回は、基礎工事の様子をお伝えします。

水戸市H邸:プレゼン、再び。

2013.01.10 水戸:晴れ。

みなさん、こんばんは。
一級建築士事務所デザインスペックの小林です。

そして、新年一発目のブログになりますので、今更ですが、あけましておめでとうございます。
本年も宜しくお願い致します。

さて、今年最初の仕事は、水戸市H邸のプレゼンです。

前回のプレゼンで、「行為室」という考え方をお施主さんへ提示しました。
(詳しくは、こちらのブログを参照ください。)

そして、お施主さんから前回のプレゼンから出てきた色々な要望を踏まえて、スタディを進めました。
基本的には、同じ考え方でプランニングをしており、自分の中では、前回のプランの発展系として位置づけていたのですが、

プレゼン前に契約を交わしてから、いざ模型を取り出して、説明を始めると、お施主さんがポロリと、
「いやあ、前回と、全然違うプランになりましたねぇ」
と。

確かに、言われてみると、見た目は全然違いますからね。
でも、根底は同じです。
その証拠に、プレゼンを進めていくと、お施主さんも、これが前回のプランの発展系だということが分かってきました。

そして、細かな要望も出てきましたが、概ね、このプランで進めることになりました。

ちなみに、今回のプレゼンでは、天井高さ1400mmの空間というのは、お施主さん自身も当たり前のように受け止めていました。
あたかも、そういう空間があることが当たり前であるかのように。
前回のプレゼンの時に、モックアップを作って説明したときに、初めて体験した1400mmの高さに対しては、とまどいを感じているようでした。
楽しい空間ということは頭では理解できていても、身体性の無いものに対しては、実感として受け止めきれない。そんな、さまざまな先入観や常識といった枠組みに囚われていていたようですが、この1ヶ月の間に、お施主さんなりに消化吸収されたのが実感できて、とっても嬉しかったです。

言葉はちょっと悪いですが、こういうのを「施主の教育」と呼んでいます。
これは、消費社会がつくりだしてしまった先入観による物差しの目盛りを一旦削り落として、それぞれのお施主さんの持つ尺度に合わせて物差しを作り直すという意味です。

ですが、大人になってしばらく経ってしまうと、この目盛りというのは、なかなかしつこく貼り付いてしまっているので、少々荒療治が必要です。
なので、初期のプレゼンでは、少し過激がプランを提示することもあります。
そこでの反応を見て、お施主さんの潜在的な物差しの尺度を感じ取るんですね。そこは、設計において、結構重要なポイントなんです。

今回は、「行為室という空間」や「1400mmの天井高さ」という物差しが、潜在的にお施主さんの中にもあったようです。
「教育」って書くと、なんだか大仰ですが、「考える幅を広げるお手伝いをする」という意味なんです。

さあ、ここから、どんどんプランを詰めていきますよ!

たのしみ、たのしみ。

HYM01
どうです?楽しそうな立面でしょう(笑)